アセチレン分子を用いた波長1.5 µm帯周波数安定化ファイバレーザの作製に成功

<成果の概要>

東北大学電気通信研究所の中沢正隆教授の研究グループは、文部科学省知的クラスタープロジェクト(仙台サイバーフォレスト構想)のもと アドバンテスト研究所と共同で、アセチレン分子吸収線を用いた波長1.5µm帯の周波数安定化ファイバレーザの作製に世界で初めて成功しました。このレーザの特徴は、 独自の周波数安定化手法を開発して従来難しかった無変調出力の取り出しを実現したことであり、レーザの線幅は約6 kHzと大変狭く、長期安定度は4×10-11に達します。光出力は1mW程度であり、また直線偏波であります。

 

本レーザを光通信用光源として用いることによりチャンネル間隔を1MHz程度に狭めることが可能であり、また位相の情報を用いた多値通信の実現により周波数利用効率を今より1桁以上拡大することも期待できます。またこのレーザは超高感度の干渉計測が可能となるため、地震波等の高感度検出にも利用できます。さらに高精度な光のものさしを実現することができることから、光波をマイクロ波のように扱う新しい光通信技術の発展につながるものと期待されます。

 

<今回の技術のポイント>

(1)ファイバレーザの周波数制御技術の実現
本技術は、ファイバレーザの発振周波数をアセチレン分子の吸収線に安定化するものです。利得媒質としてはエルビウム添加光ファイバを用いており光通信波長(1.5µm) 帯で発振するリング型単一周波数レーザであります。今回新たに開発した超狭帯域ファイバブラッググレーティング光フィルタ(周波数帯域:1.5 GHz)により、レーザ共振器から一本の発振モードを選択し、さらにその選択したモードとレーザ共振器長とを同時に制御しています。これにより2 GHz以上のレーザ周波数の連続掃引を実現し、アセチレン分子の共鳴線に容易に周波数安定化できるようになりました。

 

(2)出力光に周波数変調を含まない新たな周波数安定化技術の実現
  本技術の大きな特徴は、レーザ共振器に周波数変調を印加することなくアセチレン分子の吸収線にその発振周波数を安定化している点です。このため出力光には周波数変調成分を含みません。図1にこの周波数安定化の様子を示します。レーザの発振周波数とアセチレン分子吸収線のピーク周波数とのずれ量(誤差信号)を位相敏感検波により検出し、その誤差信号が常にゼロになるようにレーザ共振器長を制御しています。この位相敏感検波においてはLN光位相変調器をレーザ外部に設置することによりレーザ本体を変調しない周波数安定化手法を実現しました。

 

(3)プロトタイプの実現
我々が今回開発した周波数安定化ファイバレーザ装置の外観を図2に示します。サイズは縦532.5 mm×横420 mm×高さ165mmの一般的な筐体に光源部および電子制御部など総べての部品を収納し、一筐体のレーザ装置を実現しています。図3および図4に本レーザの周波数安定度および発振線幅を測定した結果を示します。図3はヘテロダイン法により本レーザの周波数安定度を評価した結果であります。図より1秒当たりの短期周波数安定度は1.3×10-10、100秒当たりの長期周波数安定度は4×10-11であります。また図4に示すように本レーザの発振線幅は6kHzと狭く、周波数変調を伴わないレーザ出力光が得られています。

 

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内容に関するお問い合わせ

東北大学 電気通信研究所

プロジェクト・リーダ
教授  中沢  正隆

TEL 022-217-5522

e-mail: nakazawa●riec.tohoku.ac.jp (※●を@に置き替えて下さい)