共同研究施設訪問

研究基盤技術センター

工作部

ユーザーコラム

図1 測定用チャンバーの模式図

図1 測定用チャンバーの模式図

図2 製作いただいたチャンバーの例

図2 製作いただいたチャンバーの例

 平野研究室では、薬物による副作用を正確に検知できる新しいバイオセンサーの開発に取り組んでいます。センサーチップは、ナノ・スピン実験施設のクリーンルームで作製していますが、測定時に用いる容器(テフロンチャンバー)は、全て工作部に加工していただいています。このチャンバーは、図1 のように2 つのブロックに分かれており、各ブロックの真ん中には溶液槽があります。片方のブロックの側面には窪みがあり、そこに微細加工したセンサーチップを置き、もう一つのブロックで挟めば測定容器の出来上がりです(図2)。この容器に測定溶液を入れて電極を置き、センサーチップの中に、心臓の細胞膜を模倣した人工細胞膜を形成すると、薬物副作用の中でも特に重篤と言われる、副作用性不整脈の危険性を検知できるセンサーを作ることができます。

初期の2007 年頃は比較的シンプルだったチャンバーも、最近は非常に複雑な構造に進化しました。この進化を支えているのが工作部の皆さんで、加工が難しいといわれるテフロンから、複雑かつ精緻なチャンバーを生み出して下さっています。一時、工作部への加工依頼リストが平野研ばかりになってしまったため、外部業者にも加工の打診をしたことがあったのですが、構造が複雑過ぎて機械加工できないと断られてしまいました。機械加工では作れないほどの難しい構造を、匠の技で加工していただいていたのか、と工作部の技術力の高さを改めて再認識させられた出来事でした。このように精緻なテフロンチャンバーを使って、私たちは、このセンサーを個人個人の体質を反映した薬物副作用検出へと発展させ、未来のテーラーメード医療の実現に役立てたいと考えています。そのためには、製作依頼するチャンバーもますます複雑になっていくと思いますが、工作部の皆さん、これからもどうぞよろしくお願いいたします。

(平野 愛弓)

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