光伝送研究分野 | 教授 | 中沢 正隆 |
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光信号処理研究分野 | 准教授 | 廣岡 俊彦 |
高精度光ファイバ計測研究分野 | 准教授 | 吉田 真人 |
図1 光ナイキストパルス(繰り返し40 GHz)の波形(左)および160 GbaudにOTDM多重化した信号(右)
図2 1024 QAM伝送実験結果
主要なインターネットプロバイダーにおける1秒あたりの情報のやり取りは2009年に1 Tbitを超え、年率の伸びは40 %に達しています。このような情報量の急激な増加に対応すべく、世界中で伝送網の大容量化が進められています。波長多重システムの高密度化が進む一方で、波長制御の容易さという点からは1チャネル(1波長)あたりの高速化が大変重要です。そこで我々は、超短パルスレーザを駆使して光時分割多重方式(OTDM: Optical Time Division Multiplexing)による超高速光伝送技術の研究開発に取り組んでいます。最近では、時間領域光フーリエ変換法と呼ばれる無歪み伝送技術を利用して、1チャネルあたり2.56 Tbit/sの伝送速度で300 kmの長距離光伝送に成功しています。さらに、「光ナイキストパルス」と名付けた新たな光パルスを提案し、隣接パルスが重なり合っても互いに干渉を引き起こすことなく、広いパルス幅でもOTDMによる超高速伝送が実現できることを実証しています(図1)。
高速化と並行して、周波数利用効率の向上を目指したコヒーレント多値伝送技術の研究にも精力的に取り組んでいます。特に、振幅と位相の両方に同時に情報を乗せるQAM (Quadrature Amplitude Modulation)技術は、無線分野ではシャノンの限界に最も近い高効率な変調方式として知られていますが、これを光で実現することを目指しています。周波数安定化レーザ、光PLL (Phase-Locked Loop)、高速デジタル信号処理技術を用いて、超多値コヒーレントQAM伝送技術の研究に取り組み、最近では1024 QAMの超多値化に世界で初めて成功しています(図2)。これにより10 bit/s/Hzを大幅に上回る周波数利用効率の実現が期待されています。
その他に、モード同期ファイバレーザの高純度かつ狭線幅な縦モードスペクトルを“光のものさし”として利用することにより、光通信だけでなく高精度な光標準・計測分野への幅広い応用も探求しています。さらに、光ファイバのクラッドに空孔を沢山もうけたフォトニック結晶ファイバの開発とその光通信への応用にも取り組んでいます。