科研費基盤研究(S)「非線形誘電率顕微鏡の高機能化及び電子デバイスへの応用」

2.今後の展望

 以上5年計画のうち3年半が経過いたしましたが、これまでに高感度プローブの開発により特に半導体デバイスでは当初目標を大きく超えて最大で7乗項までの非線形成分までが得られただけでなく、例えば、これらから局所C-V特性を再構成する手法など、多数の超高次のデータセットをフルに活用して、材料ならびにデバイスの詳細な特性を抽出する一連の計測体系がこれまでに整備されたといえます。当然の事ながら、この計測体系は更に発展していくと予想されています。

 実際に、本計測体系を用いて、当初の目標を既に超えて、今まで詳細な計測が不可能であったSiCパワーデバイスのドーパント濃度分布の計測に成功し、Si系の半導体素子においても今までどんな手法を用いても計測不可能と言われていた極低濃度領域のドーパント分布の詳細な分布の可視化にも成功し、今後更に多くのデバイスの評価に展開して行く予定です。

 更に、これらの体系的枠組みは、既に世界最高の容量感度を持つUHV-NC-SNDMへ容易に応用展開可能であり、今後グラフェンおよびそれを用いたデバイスなど新規な電子材料・デバイス評価への波及が大いに見込まれます。

 更に、非線形誘電率測定を用いた新規な表面電位の定量的測定法(SNDP)は、適用分野がKPFMと一部重なりますが、従来KPFMでは表面電荷や接触電位差と分離不可能であった、表面双極子に由来する表面電位の純電気的測定が可能であるというユニークな特徴を持ち、双極子由来の電位計測分野への波及が期待されます。また、本手法は当初UHV-NC-SNDMによる半導体表面観察に関して提案・適用されたものでありますが、同様に種々の材料・デバイス評価への応用が容易に可能であると見込まれます。

 以上の事より、本研究課題は、新規な材料・デバイスを単に高分解能観察するだけでなく、当初の想定を超えて超高次非線形誘電率顕微鏡法をベースとした一連の学問体系を構築しつつあるといえ、予定以上の成果が今後見込まれると思われます。

Page Top