Home CV Research English TOC ## 目的: 次世代情報ネットワークアーキテクチャの確立 <div align="center"><img src="images/network_architecture.jpg" width="80%"><br></div> インターネットは40億人のユーザが利用する巨大な情報ネットワークであり、今や人々の生活に欠かすことができないインフラだが、消費エネルギーの増大、モノのインターネット (Internet of Things: IoT) への対応、恒常的なネットワーク輻輳など多数の課題を抱えている。これらの問題を解決し、より高度な情報社会を実現するための高信頼、高性能、可用性の高い情報ネットワークアーキテクチャの確立を目指し、仮想化ネットワーク/システム設計・制御技術、次世代モバイルネットワークアーキテクチャ、ネットワーク性能評価技術などに関する研究に取り組んでいる。<br> ## 最近の研究テーマ   ### M2M/IoT通信収容のためのモバイルコアネットワークアーキテクチャ <div align="center"><img src="images/mobile_core1.jpg" width="80%"><br></div> 携帯電話加入者数の増加や高機能なスマートフォン等の普及により、3G やLTE などのモバイルネットワークにおいて、ユーザプレーン (ユーザのデータが送受信されるネットワーク) とコントロールプレーン (ネットワーク制御、端末認証などのための通信が行われるネットワーク) の双方において発生する輻輳への対応が課題となっている。新たな需要拡大を伴う通信形態であるMachine-to-Machine (M2M) 通信やIoT (Internet of Things) 通信が増加すると、特にコントロールプレーンの輻輳が深刻になることが指摘されている。M2M/IoT通信は、通信するデータ量そのものは多くないことが多いが、端末数が膨大になるとされており、その通信特性はスマートフォン等と大きく異なる。そのため、M2M/IoT通信を行う端末を従来の携帯電話端末やスマートフォンと同じ方式でモバイルネットワークに接続すると、特にコントロールプレーンの輻輳が悪化する。 スマートフォンのようなユーザ端末のトラヒックはユーザの端末操作に応じて発生し、遅延時間に対する要求条件も厳しいため、輻輳解消のために通信を遅らせる等の制御は不向きである。一方、M2M/IoT端末が発生させる通信は、一般的に機械やセンサ端末等に組み込まれることが多く、端末数が非常に多いものの、通信は間欠的であり、遅延時間に対する制約はユーザ端末に比べると緩い場合がある。本研究では、このようなIoT/M2M通信の特性に着目し、モバイルネットワーク負荷を軽減するためのモバイルネットワーク制御に関する研究に取り組んでいる。 <div align="center"><img src="images/mobile_core2.jpg" width="80%"><br></div> 例えば、モバイルコアネットワークを構築するための実ソフトウェアを仮想化プラットフォーム上に展開し、端末が通信を行う際に必要となるシグナリング処理の処理遅延時間を評価した。モバイルコアネットワークの構築には、オープンソースのモバイルコアネットワーク実装の一つであるOpenAirInterface を用い、多数の模擬ユーザ端末をクラウドコンピューティングプラットフォーム上に展開することで、多数の端末がコアネットワークに接続する環境を構築した。評価の結果、1 コア1 GHz のCPU を持つ仮想マシンにコアノード機能の1つであるMME の機能を持たせた場合、128 台のユーザ端末からの同時アクセスによって、端末が通信要求を発生させてから通信可能となるまでの時間が最大で450 % 増加することがわかった。 - 参考ポスター: 阿部修也, 長谷川剛, 村田正幸, C/U分離を適用したモバイルコアネットワークにおける通信集約方式の性能評価, インターネット技術第 163 委員会 (ITRC) 新世代ネットワーク構築のための基盤技術研究分科会 (NWGN) ワークショップ, 2017. [PDF](images/s-abe2017vision21v1.pdf) - 参考ポスター: 上野真生, 多数のM2M/IoT端末からの集中アクセスを考慮したモバイルコアネットワークの実験評価. [PDF](images/poster_m-ueno.pdf) ### 仮想化技術に基づくモバイルアクセスネットワークの性能解析 (沖電気との共同研究) <div align="center"><img src="images/vpon_analysis.jpg" width="80%"><br></div> 近年、5Gネットワーク (第5 世代携帯電話網) の実現に向けて、モバイルネットワークを構成するRadio Access Network (RAN: 無線アクセスネットワーク)や、端末が送受信する情報をインターネット等の外部ネットワークへ運ぶためのフロントホールネットワーク、バックホールネットワークの再構築が進んでいる。そのような新たなネットワークにおいては、資源利用効率を高めるために、サーバやノード機能を実現する計算機の資源や、トラヒックを運ぶネットワーク資源を仮想化することが前提となっている。特に、Software Defined Network (SDN)技術は、ネットワークの柔軟な制御を可能とする重要な技術として考えられている。モバイルネットワークに対して仮想化技術を適用することで、トラヒック需要の変動に応じた柔軟な計算機資源の制御やネットワーク制御が可能となる。また、ネットワークの省電力化に対しても有効であると考えられている。しかし、特にモバイルネットワークにおいては、仮想化技術の適用によるそれらの効果の定量的な評価はほとんど行われていない。 そこで、フロントホールネットワークとバックホールネットワークが仮想化技術によって統合的に取り扱われるような将来のモバイルアクセスネットワーク環境を前提とし、モバイルアクセスネットワークを仮想化した時の性能を見積るための、数学的解析手法を確立し、モバイルネットワーク設計や動的制御へ繋げるための研究を行っている。具体的には、対象とするモバイルアクセスネットワークの数学的なモデル化を行い、アプリケーショントラヒックのエンド間遅延時間、パケット廃棄率、及びシステム全体の消費電力などを導出する解析手法を考案している。また、簡素なネットワークを想定した数値評価を既に行っており、仮想化されたフロントホールとバックホールのネットワーク機能を適切に配置することによって、遅延制約のあるアプリケーショントラヒックのエンド間遅延時間を最大で約70%削減できることを明らかにしている。 - 参考ポスター: 山崎里奈, フロント・バックホール統合型モバイルネットワークの消費電力解析. [PDF](images/panel2019r-yamask.pdf) ### 生化学反応式を用いた空間協調モデルに基づくサービス空間構築 <div align="center"><img src="images/biochemical1.jpg" width="80%"><br></div> Network Function Virtualization (NFV: ネットワーク機能仮想化) やマッシュアップWebサービスなどのネットワークシステムにおいては、汎用サーバ上にソフトウェア化されたネットワーク機能やアプリケーションプログラムを配置し、実行する。分散配置されたサーバに、どのサービスや機能を配置するか、及び配置された各サービスや機能にどう資源を割り当て実行するかを各サーバで自律的に決定することは、物理的に広い範囲に跨がるネットワーク環境への適用や、サーバ障害や環境変動への対応をする場合に有効であり、システムの冗長性や成長性を保ちながらシステム全体を制御できる。また、遺伝子ネットワークや生化学反応等における特性である自己組織性や堅牢性を情報ネットワークアーキテクチャへ応用する検討が活発に行われている。 <div align="center"><img src="images/biochemical2.png" width="80%"><br></div> 本研究では、生化学反応式を利用した空間拡散モデルに基づいて、上述のようなネットワークサービスにおいて、提供するサービスや機能を適切な場所で実行し、サーバ資源をそれらで効率よく共有する手法を提案している。NFVへの適用例においては、NFVにおけるサービスチェイニング、Virtualized Network Function (VNF: 仮想化ネットワーク機能)のサーバへの配置、フロー経路の決定などを行うための化学反応式を構築し、それを各サーバで分散実行する。これにより、各サーバで実行すべきVNF、サービスチェインの構成、フロー経路などを各サーバが自律分散的に決定することができる。 このようは手法の性能を、コンピュータシミュレーションによって評価するとともに、NFV環境実現のためのオープンソースプロジェクトであるOPNFV上に実装するためのデザインを検討している。特に、サービスチェイニングの実装デザインである Network Service Header (NSH) の具体的な実現方法を提案し、その実装を進めている。 - 参考ポスター: 黒川稜太,生化学反応に着想を得たサービスチェイニングのための動的かつ自律分散的なVNF制御手法. [PDF](images/lab_poster_2019_r-kurokw.pdf) ### クラウドシステムにおける予測に基づく資源割当制御 <div align="center"><img src="images/cloudburst1.png" width="80%"><br></div> ベアメタルクラウドシステムはテナントに対して専用の物理マシン、およびその上で稼働する仮想マシンを提供する。本システムおいては需要に応じた物理マシンおよび仮想マシンのスケールアウト/インの制御が重要となる。その際、物理マシンと仮想マシンの資源確保やマシンの起動、終了にかかる時間的コスト (リードタイム) の違いを考慮し、適切なタイミングで物理マシンと仮想マシン資源を増減させる必要がある。しかし、既存研究にはその点に着目したものがほとんど無い。 そこで本研究では、階層的、かつ資源制御頻度を考慮した、モデル予測制御に基づく物理マシン及び仮想マシン資源の制御手法を提案している。具体的には、資源の利用効率と設定変更にかかるオーバヘッドの双方を考慮する。また、リードタイムが大きい物理マシンの資源増減をできるだけ行わず、仮想マシンを需要に応じて起動・終了させる。実システムのアクセスログを用いた評価により、提案手法がSLA違反をほとんど起こすことなく、適切に資源制御を行うことができる。 <div align="center"><img src="images/cloudburst2.png" width="80%"><br></div> また、クラウドコンピューティングにおけるさらなる弾力的な資源制御のために、アプリケーションシステムへのリクエスト到着レートの増減に合わせて、計算資源を増減させると同時に制御の緩急を調整する手法を提案している。対話型処理を扱うクラウド上のアプリケーションシステムを対象とした自動スケーリングにおいて、制御間隔ごとにリクエスト到着レートの予測を行い、仮想サーバの台数を増減させる。フラッシュクラウドの例を含む実システムのトレースデータを用いて数値評価を行っており、従来の固定長タイムスロットでの制御に比較して、タイムスロット幅を可変とすることで、従来の2/3 から1/2 程度の構成変更回数で、従来同等の余剰処理能力が保たれることが明らかとなった。また、リクエスト到着レートの分単位の変動の大きなアプリケーションシステムでは、タイムスロット幅を小さくすると予測誤差が大きくなり、その結果仮想サーバの過少割り当てが発生することもわかった。