私たちは普段様々な音に囲まれながら生活しています。この全周囲から届く音を私たちは左右の耳で聴き,脳内で処理し,音がどこから来たのか,何を言っているのかを瞬時に理解しています。この時に大きな役割を果たす聴覚は,人間の知覚情報処理の中で視覚と並んで重要な知覚情報処理過程の一つです。特に普段の会話などの音声コミュニケーションの場面では,聴覚情報はなくてはならない感覚情報になります。歳をとるにしたがって聴覚機能は衰えてしまうこともあり,あらゆる年代の人に,快適な音環境を提供することは私たちにとってとても大切です。

2019年8月に発足した本研究室では,この人間の聴覚情報処理過程を明らかにして,その知見を生かした高度な音コミュニケーション技術の確立を目指しています。その際には,情報の受け手は人間であるということを念頭に,聞き手にとって聞きやすい情報,聞き手が欲する情報は何かということを意識した音情報提示技術を実現していきます。

研究は大きく分けて二つの柱からなっています。一つは人間の聴覚情報処理過程の解明です。聴覚情報処理過程は,視覚などの他の感覚器官から入力される情報も統合処理した多感覚情報処理過程として知られています。そこで,様々な感覚情報が存在する環境での人間の聴覚情報処理過程を明らかにしています。もう一つは次世代音コミュニケーション技術やそれを用いたシステムの実現です。よりリアルな音空間情報の提示が可能な技術や,どんな環境でも聴き取りやすい音声の提示技術の実現を目指しています。これらの研究を高いレベルで行うために,医学,心理学などの他の研究分野の研究者と議論しつつ,日々研究を行っています。

 

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様々な音響実験で使用する無響室
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本研究室で開発した3次元音空間収音用球状マイクロホンアレイ