長 康雄
Yasuo Cho
情報デバイス研究部門 教授
Information Devices Division, Professor

2022.3 退職

私は1985年3月に電気通信研究所・山之内研究室で博士課程を退学し、同研究室で助手として5年間通信用弾性表面波(SAW)信号処理非線形機能素子技術に関する研究の真似事をさせて頂き、更に1990年山口大学工学部に移籍して教育・研究の修業を積んだ後、1997年10月に通研にUターンして以来、本年3月までの25年余り世間を知らぬまま大学人として過ごして参りました。

通研に戻ってからは山口大学時代に芽吹いた走査型非線形誘電率顕微鏡(SNDM)とそれを応用した次世代超高密度強誘電体記録(SNDMプローブメモリ)の研究を発展させることに注力し、SNDMに関しては細々ですが実用化まで持って行く事ができましたが、SNDMプローブメモリに関してはまだまだこれからという段階で定年を迎えるに至っております。

本年4月より本学未来科学技術共同研究センターに移籍し、通研時代の研究をより発展させるべく、高機能SNDMの開発、それを用いた次世代パワー半導体の高性能化に資する研究・開発、未達のSNDMプローブメモリの実用化研究等に勤しんでおります。

加えて面白いことに、ディジタル時代の到来で全く日の目を見なかった、ドクターコースから助手時代に行っていた、如何にして大きな非線形を得るかを競うアナログSAW非線形機能素子の研究が形を変え、如何にして通信素子の非線形を小さく抑えるかという真逆で且つホットな35年の空白期間を飛び越えた新たな研究テーマとなり、それで飯の一部が食えております。

世の中の外部評価の重圧の下、研究のトレンドを追う風潮にかまびすしい今日この頃ですが、「研究に新しい古いは無いな」と今更ながら実感し、毎日極めて楽しく過ごさせて頂いております。

末筆になりましたが、電気通信研究所の皆様の益々のご活躍とご発展を心よりお祈り申し上げます。