本館開所式・創立80周年記念式典

 電気通信研究所本館の開所および創立80周年を記念し、6月23日に記念式典、講演会を開催いたしました。式典には、268名、祝賀会には180名の方々にご参加頂き、研究所の歴史の大きな節目を記念することができました。記念式典は、大野所長、里見総長の挨拶に続き、文部科学省大臣官房審議官安藤慶明様、総務省大臣官房総括審議官武井俊幸様よりご祝辞を頂きました。安藤様からは、情報通信研究分野における拠点としての研究・教育へのこれまでの貢献並びに今後の国際的飛躍への期待のお言葉を、また武井様からは耐災害ICT研究を含めたこれまでの情報通信行政への貢献と今後の新しい情報関連技術の先導役・牽引役としての期待のお言葉を頂きました。それぞれのお立場からの本研究所への期待は、研究所の将来に向けた指針として所員に受け止められたものと思います。

 記念講演会は、招待講演のセッション1と所内教員講演のセッション2から構成されました。セッション1では、産官学の分野からお招きした、久間和生議員、早坂伸夫氏、原島博名誉教授の御三方から、科学技術イノベーション戦略、半導体産業の今後、文化創造学としての工学に関する講演を頂きました。久間議員の今後の科学技術政策におけるICT技術への期待、早坂氏の半導体産業の将来そして原島教授の文化創造学としての工学のあり方に関するお話しは、いずれも80周年の節目に、情報通信分野における研究の将来を考える上で、大変参考となる有意義なものでした。

大野所長挨拶

大野所長挨拶

 所内の講演者によるセッション2は、将来に向けて所が先導する研究分野の例示として、グラフェンを利用したテラヘルツレーザー、脳機能を模した新概念の脳型LSI、人間の多感覚情報処理過程、超大容量化を実現する情報ストレージの研究分野での講演を行いました。式典に先立って行われた全研究室の研究紹介、所長の記者会見も含め、本研究所の活発な研究活動を紹介することができたことは、研究所の現在と将来を示す機会としても有意義であったと考えます。記者会見の模様は多数のメディアに取り上げられ、本館の研究室公開の様子もニュースで報道されました。

 記念式典および記念講演会の次第は以下の通りです。

記念式典 (13:30~14:00)
所長挨拶 東北大学電気通信研究所長 大野英男
総長挨拶 東北大学総長 里見 進
来賓祝辞 文部科学省大臣官房審議官 安藤慶明
      総務省大臣官房総括審議官 武井俊幸

記念講演会 (14:00~17:00)
セッション1招待講演「電気通信研究所創立80周年に寄せて」

●我が国の科学技術イノベーション戦略
~ICTによるバリューチェーンの創出~
総合科学技術・イノベーション会議議員 久間和生

●半導体産業の現状と今後の展望
株式会社東芝執行役常務 早坂伸夫

●文化創造学としての工学へ向けて
東京大学名誉教授 原島 博

セッション2「情報通信のこれから ̶ 次の80年に向けて」
●グラフェンを利用したテラヘルツレーザーの創出とその光無線融合未来ICTへの応用
電気通信研究所 教授 尾辻泰一

●人間的判断の実現に向けた新概念脳型LSIの研究開発
電気通信研究所 教授 羽生貴弘

●人間の多感覚情報処理過程の理解深化から未来の高次情報通信システムへ
電気通信研究所 教授 鈴木陽一

●磁気録音からの80年と情報ストレージへの発展
電気通信研究所 教授 村岡裕明

 記念講演会に引き続き、本館前で記念撮影を行いました。当日の空模様や参加者誘導などについて心配もありましたが、表紙の写真の通り本館を背景に講演会までご参加頂いた参加者全員の撮影ができました。祝賀会では、岩崎名誉教授の祝辞と乾杯に続き、渡辺久恒氏元運営協議会委員、寺西昇電気情報系同窓会副会長、金井浩副学長から、また閉会前に川又電気情報系系長からお祝いの言葉を頂きました。本館開所式・創立80周年の記念の祝賀はもとより、電気通信研究所が、創立当初の東北大学電気工学科そして現在の電気情報系の中で発展したこと、および今後の関連研究科との連携の重要性を新たに認識する機会ともなりました。

記念式典の会場風景

記念式典の会場風景

 さて、本研究所は、これまで25周年、50周年の式典を行ってきました。80周年記念ということで、過去の式典についても少しご紹介いたします。25周年式典に関しては、電通親睦会誌に報告記事が掲載されています。電通親睦会は、東北大学電気系教職員の親睦のための会で、現在当研究所の親睦会の前身ともいえます。25周年式典は、昭和35年9月24日に川内の講堂で行われ、およそ500名の参加者があったとのことです。永井健三所長挨拶、学長式辞に続き、八木秀次教授、抜山平一初代所長など所の創立、育成に尽力された方々への謝辞、記念品贈呈が行われています。また式典の他、記念事業として書籍の刊行を行っています。当研究所の図書室に「Fundamentals of Coupled and MultiwireAntennas」、「Ultrasonic Transducers」、「Electron Tube」の3冊があり、それぞれ内田英成教授、菊地喜充教授、小池勇二郎教授の編となっています。東北大学の電気通信研究所を含む電気系の研究成果をまとめ、内外の多くの人に利用してもらうことを発刊の目的としていて、関連分野を牽引するとの強い意志が感じられます。

久間議員ご講演

久間議員ご講演

早坂氏ご講演

早坂氏ご講演

原島名誉教授ご講演

原島名誉教授ご講演

 50周年記念式典は、昭和60年9月7日に開催され、当日の参加者名簿によると参加者は324名でした。西澤潤一所長の挨拶、総長の式辞、来賓の祝辞に続き、江崎玲於奈博士、小林宏治氏(NEC会長(当時))の記念講演がありました。その前日には、1号館において研究成果の展示が行われています。式典の模様はビデオ撮影の記録があり、今回80周年記念品としてUSBに入れて配布しました。また、50周年式典の記念品が東北大学50周年時の座談会のテープであったことから、今回の記念品のUSBにはそちらも一緒に入れました。座談会では、抜山平一初代所長、渡邊寧工学部長、松平正寿工学部教授、永井健三電気通信研究所所長、菊地喜充電気通信研究所教授(それぞれ当時)が話されています。本研究所の実体はその設立前も設立後も工学部電気工学科の研究と連続していた様子を知ることができ、それが現在の関連研究科との親密な関係や本研究所の研究と教育のあり方にも生きていることがわかります。また、電気通信という研究分野の名称が抜山先生の考案によるとの話もあり、今日の本研究所の基礎となる新しい研究分野を創成してきた歴史に触れる思いがします。その他、研究は頭でやるもので建物はいらないとの話は、本館の開所においても心にとどめておきたいと思う次第です。

 話を本館開所式・創立80周年記念式典にもどします。記念式典および祝賀会での大野所長の挨拶では、大きな貢献を果たした当研究所の諸先輩方の業績の紹介において、その伝統の重みとは、現在の構成員に対する高いスタンダードの要求であることを、そして新しい環境におけるさらなる研究推進が期待されることを述べています。また、50周年記念式典の当時の西澤所長の挨拶にある「学問は名前がつかないうちに始めなければならない」との言葉に触れ、新しい分野を切り開くことが当研究所の役割であることも強調しました。大野所長の言葉に現れている通り、所員一同にとって今後100周年、さらに先を見据えた研究教育活動への展開について心を新たにする機会となりました。ご参加頂いた方のみならず、今回はご都合がつかなかった方々におかれましても、本研究所への今後益々のご指導とご鞭撻をお願い申し上げます。最後になりましたが、本式典は多くの教職員の協力なしには開催できなかったことを申し添えます。ご尽力頂いた皆様には心より感謝いたします。

懇親会の風景

懇親会の風景

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