文部科学省光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)光子数識別量子ナノフォトニクスの創成

1. 光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)について

 光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)は、経済・社会的な重要課題に対し、量子科学技術(光・量子技術)を駆使して非連続的な解決(Quantum leap)を目指す、文部科学省の公募型研究開発プログラムです。以下の3つの技術領域で、それぞれネットワーク型研究拠点を形成し、技術領域毎に「Flagship プロジェクト」と「基礎基盤研究」が実施されます。

(1) 量子情報処理(主に量子シミュレータ・量子コンピュータ)
(2) 量子計測・センシング
(3) 次世代レーザー

 今回、私たちの研究提案「光子数識別量子ナノフォトニクスの創成」が、技術領域「量子計測・センシング」の基礎基盤研究として採択され、平成30年度から10年間の予定で研究を開始しました。ここでは、本プロジェクトの概要を簡単に説明します。

2. プロジェクトの目標とねらい

 近年、量子コンピュータや量子通信、量子計測など、量子力学の原理を用いた新しい情報通信・計測技術が注目を浴びています。光は、量子情報通信・計測技術における情報伝送・センシング媒体として最も優れた特性を有しています。光を用いた極限的通信・計測技術において、光の強度、周波数、位相などの安定度は、計測の精度を決定する重要な性能です。特に、光の量子性を駆使した量子光計測においては、光の量子性に伴う雑音(量子ゆらぎ)によってその計測精度が支配されることになりますが、レーザーを含む従来の古典的光源では量子雑音を制御することは不可能であり、その限界を打破するためには、光の量子性を極限まで利用し尽す全く新しい光源が必要です。

図1.シリコン基板上に集積構築した光子数識別量子計測回路の模式図

図1.シリコン基板上に集積構築した光子数識別量子計測回路の模式図

 本プロジェクトでは、光子統計性を極限まで制御し、光子状態が確定かつ高い量子干渉性(不可識別性)を有する量子光源と、極めて高い精度・量子効率で光子数を識別して検出可能な超伝導光子数識別検出器、およびそれらに付帯する量子計測光回路をシリコン基板上に実装した革新的量子計測用光源・光集積回路を開発します(図1)。具体的には、
(1) 超低損失シリコン細線導波路を用いた超高性能光子対光源
(2) シリコン基板上に実装可能な、超高量子効率・超高速超伝導光子数識別検出器
(3) 光子数識別検出と光集積回路および光MEMS 技術を基盤とした革新的量子計測光回路
の三本柱の研究開発を推進するとともに、それらを統合する革新的量子光技術分野「光子数識別量子ナノフォトニクス」の創成を目指しています。

 本プロジェクトで開発する量子光源は、光子数が確定でかつそれらの間の量子干渉性が確保された新たな量子状態を発することができ、それを利用した革新的量子計測技術の開拓を促すものです。本研究で開発される技術は、量子情報通信・計測のみならず光科学技術全般にわたって極めてインパクトの大きな成果となることが期待されます。

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