文部科学省 国家課題対応型開発推進事業『耐災害性に優れた安心・安全社会のためのスピントロニクス材料・デバイス基盤技術の研究開発』

(3)スピントロニクス素子・デバイス評価装置の開発

図4 東栄科学産業と共同で開発している(a)高感度・高磁界印加機構を有する振動試料型磁力計、(b)1nsまでの高速測定と磁界印加が可能な300 mm 低リークチャックの概観。

図4 東栄科学産業と共同で開発している(a)高感度・高磁界印加機構を有する振動試料型磁力計、(b)1nsまでの高速測定と磁界印加が可能な300 mm 低リークチャックの概観。

 微細スピントロニクス素子の高性能化を実現するには、より高い磁気異方性を有する材料を開発し、それを用いて高い熱安定性を確保する必要があります。高磁気異方性を有する薄膜材料の特性を評するには、高感度で高磁界印加可能な振動試料型磁力計が必要です。また、高速スピントロニクス素子の動作を実証するには、1ns以下の高速領域の計測と磁界印加が可能な、すなわち非磁性の材料構成された、300mm低リークチャックが必要となります。本委託研究では、地元企業である東栄科学産業と共同で、両装置の開発を進めています。このような300mmのチャックは世界で初めてのものです(図4に開発を進めている両装置の概観図を示します)。

(4)耐災害性を有するシステムの実現に向けたシミュレーション

 スピントロニクス素子を用いた不揮発性ワーキングメモリをコンピューティングシステムに適用した場合、耐災害性(性能維持機能や消費電力性能など)の向上が期待されます。耐災害性の向上に関ては、ベンチマークシステムを構築し、シミュレーションで評価を行います。これまでに、シミュレーションに必要な性能維持に関わる故障率評価の環境の構築、消費電力性能の評価環境の構築を行ました。また、耐災害性システムの回路・アーキテクチャ・システムの基礎的技術に関する研究開発を進めています。今後は、これまでに構築した環境を用いて、不揮発化による耐災害性の向上をシュレーションで検証する予定です。 本委託研究は残すところあと一年となりました。さらに一段と研究開発を進め、世界をリードする成果を積み上げて、耐災害性に優れたコンピューティングシスムの基盤技術を確立したく、皆様の一層のご指導ご鞭撻をお願い申し上げます。最後に、本研究を推進するにあたりご支援を頂いている関係各位に深く感謝の意を表します。

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