巻頭特集/戦略的創造研究推進事業CREST

GOSFET&CGOS(尾辻教授・末光准教授グループ、佐野教授グループ):現状のグラフェンFETの性能はSi-MOSFETのスケーリング性能程度に留まり、グラフェン本来の優れた物性が反映できていません。私達は、特にチャネルドーピングとゲートスタック技術の2つが本質的なFET性能律速要因であることを明らかにし、その根本的な解決策の検討に腐心しました。その結果、多元物質科学研究所・高桑雄二教授グループの協力を得て、ダイアモンドライクカーボン(DLC)を絶縁膜とし、DLC内への不純物δドープによってキャリアをグラフェンにリモートドープするという独自の技術を開発しました。これは、化合物半導体ヘテロ接合構造によって実現する高電子移動度トランジスタ(HEMT)と等価な遠隔不純物注入技術であり、“グラフェンHEMT”と称しています(図3)。イオン注入等の熱的機械的化学的に安定な不純物ドーピング技術のないグラフェンにおいて画期的なドーピング技術であり、グラフェンチャネルFETの速度性能律速要因の一掃、そして擬似相補型論理CGOSの超高速低消費電力動作が期待できます。

図3  DLCをゲートスタックとするδドープによるグラフェンHEMTの開発

図3 DLCをゲートスタックとするδドープによるグラフェンHEMTの開発

PRGOS(尾辻教授グループ、RYZHII教授グループ、佐野教授グループ):特異な光電子物性を有するグラフェン内二次元キャリアによる電荷粗密波動(プラズマ波動)の分散特性を半古典的量子論により定式化し、PRGOSによるTHz波発生・検出・増幅・光ミキシング等の多様なデバイス特性のユニバーサルかつ高精度なモデル化を実現するとともに、グラフェンによるプラズモニック機能デバイス(図4)、THzレーザーをはじめとする新原理デバイスを考案し・実験実証を進めました。グラフェンTHzレーザーの創出については科学研究費補助金:特別推進研究(本誌Vol. 6を参照)として本研究とは分離して推進しています。

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