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萌芽研究部 耐量子計算機暗号の高効率高安全実装技術の研究

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萌芽研究部 耐量子計算機暗号の高効率高安全実装技術の研究

教員

[ 代表・教授(兼)] 本間 尚文

近年、大規模な量子計算機の研究開発が活発化することに伴い、多くの現代暗号(特に公開鍵暗号技術)が解読される脅威が懸念されている。暗号は一度使用されると長期間に渡って運用されるため、量子計算機に対する安全性は今後の暗号システムに不可欠になると予想される。特に、耐量子計算機暗号(Post Quantum Cryptography: PQC)は、そうした安全性を担保する暗号技術として近年急速に注目が高まっている。実際、米国標準技術研究所(NIST)は2035年までにPQCへの完全移行を目指しており、2024年に米国標準方式第一弾の策定を行っている。我が国においても政府による暗号技術検討会によりPQCの研究開発動向が注視されており、今後社会的な実装も徐々に広がると予想される。
本研究では、以上の背景から、PQCを対象とし、その高効率・高安全な実装技術を開発することを目的とする。特に、PQCの身近な端末やエッジでの実装を想定した場合、サイバー攻撃に加えて物理攻撃(システムに物理的にアクセスして情報の収奪や改ざん等を行う攻撃)が重大なリスクとなる。その中でも現実的な脅威とされるのが、システム動作中の副次的な物理量(消費電力・放射電磁波・演算時間等)を利用して秘密情報や制御を非破壊・非侵襲に収奪するサイドチャネル攻撃である。PQCであっても、こうしたサイドチャネル攻撃への耐性を考慮した実装が重要となる。そこで、本研究では、上記の課題を解決する高い物理安全性(耐タンパー性)と効率性を両立する実装技術を開発することを目指す。具体的には、アルゴリズムからハードウェア、システム実装までを縦断したアプローチにより、格子暗号方式、符号暗号方式、多変数多項式暗号方式といった主要なPQC方式を対象とする耐タンパー性・高効率性ソフトウェア・ハードウェアの実装技術を開発する。