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「スーパハイビジョンの先を目指して」

「スーパハイビジョンの先を目指して」

開催日:2013年2月22日(金)13:15~16:45
研究題目:「スーパハイビジョンの先を目指して」
開催場所:東北大学電気通信研究所中会議室(2号館4階)
※参加費:無料(事前申し込み2月18日締切)
共同プロジェクト研究Sワークショップ(静岡大学電子工学研究所・NHK放送技術研究所・東北大学電気通信研究所)


共同プロジェクト研究Sワークショップ(静岡大学電子工学研究所・NHK放送技術研究所・東北大学電気通信研究所)「スーパハイビジョンの先を目指して」

  • 日時:2013年2月22日(金)13:15~16:45
  • 場所:東北大学電気通信研究所中会議室(2号館4階)
  • 参加料:無料
  • 申込方法:メールにて2013年2月18日(月)までにお申込み下さい。
  • 問い合せ先:電気通信研究所人間情報システム研究部門 先端音情報システム研究室
    (教授)鈴木  陽一 TEL: 022-217-5460

プログラム
13:15 開会
13:15-13:20 開会あいさつ 中沢正隆 (東北大学電気通信研究所所長)
セッション1:これまでの成果
13:20-13:50 「広視野映像に対する視覚的注意の推定」
塩入諭1,平谷皓倫1,江本正喜2(1東北大学電気通信研究所,2 NHK放送技術研究所)
(概要) 与えられた視覚情報から視聴者が注意を向ける場所を予測することは,テレビ番組の制作を始め多くの場面で有益であり,そのために様々な注意モデルが提案されている。しかしスーパーハイビジョンは格段に広い視野を提供するため,従来の注意モデルではカバーしきれない。広視野を対象とするためには,空間周波数特性の視野依存性と大域運動特性を考慮する必要がある。本研究では,それらを考慮した視覚的注意モデルの構築を目的とする。前者は,視野に依存したコントラスト感度関数を視野全体に拡張し,視点の移動をモデルに組み込むことで実現することができる。後者は,自己運動に基づく運動成分を抑制することで実現することができる。運動成分は強い誘目性を持つが,自己運動に基づく運動成分は注意を引かない。この問題は,視野全般に亘る大域運動から自己の運動を推定し,それに基づく運動成分を抑制することで解決できる。本発表では,これらの点を考慮した広視野対応の視覚的注意モデルについて説明する。
13:50-14:20 「フルスペックスーパーハイビジョンイメージセンサの開発」
島本洋1,渡部俊久2,3,北村和也1,3,大竹浩1,江上典文1,林直人1,川人祥二3,小杉智彦4,渡辺恭志4,青山聡4
(1 NHK放送技術研究所,2 NHKエンジニアリングサービス,3静岡大学電子工学研究所,4ブルックマン テクノロジ)
(概要) スーパーハイビジョンは,2次元映像として究極の臨場感と実物感を提供する次世代の放送メディアである。その動画像画質改善に向けて,フレーム周波数が120Hzのフルスペックスーパーハイビジョンイメージセンサの開発を進めている。本センサでは,約3300万画素からの信号を従来の倍のフレーム周波数で出力しなければならないため,高速動作が求められる。また,フレーム周波数が高くなると,駆動電力が増大するとともに感度の低下を招くため,消費電力や雑音の低減も併せて要求される。このため,A/D変換回路に2段サイクリック型A/D変換方式を用いたイメージセンサを試作した。その結果,データレート51.2Gbpsの高速動作と,駆動電力2.5Wの低消費電力を同時に実現することができた。さらに,本センサを3枚用い,カラーカメラおよび120Hz映像表示装置を試作した。撮影の結果,120Hzの映像は60Hzに比べて速く動く被写体の「動きぼやけ」が低減されることを示した。
14:20-14:50 「SOI基板を利用した光検出器の高性能・高機能化」
猪川洋,佐藤弘明,杜偉,プトラント デデイ,小野篤史(静岡大学電子工学研究所)
(概要) 絶縁膜上にシリコン層が形成された構造(SOI)を用いると,光の閉じ込め効果やキャリアの閉じ込め効果によって,光の吸収が増大したり光によって生じたキャリアに対する検出感度が向上したりして,ユニークは特徴を持った光検出器が得られる。具体的には,SOIフォトダイオード上に金属格子を配置すると,格子からの回折光がSOI中の導波路モードと結合して1桁高い受光感度や特定の波長・偏波に対する選択性が得られる。光照射によって発生し微細なSOI MOSFETのボディに蓄積されたキャリアはドレイン電流の変化を観測することによって1個単位で数えることができ,単一フォトン検出が可能となる。この単一フォトン検出器はアバランシェ・フォトダイオードと比較してダーク・カウントが4桁少なく,複数のフォトンが同時に入射してもフォトン数を分解する能力がある。本報告ではこの様なSOIによって達成される新規な光検出器について紹介する。
14:50-15:10 休憩
セッション2:今後の展開をめざして
15:10-15:40 「静岡大学電子工学研究所の歴史と特徴」
三村秀典(静岡大学電子工学研究所所長)
(概要) 静岡大学電子工学研究所の発祥は,1924年(大正13年),静岡大学工学部の前身である浜松高等工業学校において高柳健次郎のテレビジョ ン研究が行われた 電視研究室にさかのぼる。1965年(昭和40年),新制大学で唯一の理工系附置研究所「電子工学研究所」となった。本研究所は当初6部門で発足し,1989年(平成元年)には3大部門12分野に拡充した。当時から研究の柱として「イメージングとセンシング」を標ぼうし,「画像科学の研究拠点」なることを目的としてきた。21世紀に入り,「感性豊かな光・画像コミュニケーションの実現」をの研究課題として設定し,その実現のため,旧来の電子・光子の集団的取り扱いとは異なり,個々の電子・光子を取り扱う新しい「画像科学」,すなわち「ナノビジョンサイエンス」を提案して研究を推進している。更に法人化後に静岡大学が設定した重点研究4分野の1つである「極限画像科学(advanced nanovision science)の研究」を進めることにより、「光・画像科学分野の世界研究拠点」となることを目指している。
15:40-16:10 「グラフェンテラヘルツレーザーの創出に向けて」
尾辻泰一1,佐藤昭1,末光眞希1,リズィーマキシム2,佐野栄一3,リズィーヴィクトール4
(1 東北大学電気通信研究所,2 会津大学コンピュータ理工学部,3 北海道大学量子集積エレクトロニクス研究センター)
(概要) 将来の情報通信技術の飛躍的な発展には新たな周波数資源の開拓が必須である。光波と電波の融合域であるテラヘルツ(THz)領域は長らく未開拓領域として取り残されてきた。そのような中で,炭素原子の単層シート“グラフェン”が夢の光電子材料として注目されている。グラフェンは,バンドギャップおよび有効質量が消失した特異なバンド分散とキャリア輸送特性を有する。著者らは,伝導帯と価電子帯が完全対称かつ線形分散特性を示すことに着目し,光学励起もしくは電流注入励起したグラフェンがTHz帯で反転分布・負性導電率を有することを理論解析により発見し,最近,フェムト秒レーザを用いて誘導増幅放出の観測に成功している。実用的なTHz帯レーザ共振器構造や電流注入型レーザ素子構造についての提案と理論解析も行っている。本発表では,グラフェンによるテラヘルツレーザの創出に向けた理論・実験研究の進展について紹介する。
16:10-16:40 「第一原理計算のできること」
白井正文(東北大学電気通信研究所)
(概要) 第一原理計算とは,実験データなどの経験的なパラメータに頼らずに,固体中の電子状態を求める計算手法のことを指す。この講演では,第一原理計算の基本概念を分かり易く解説すると共に,講演者の研究グループによる最近の計算事例を紹介する。磁気記録装置のデータ読出用センサや不揮発性磁気メモリの基幹要素であるトンネル磁気抵抗素子は,電気伝導に寄与する電子のスピンが偏極した電流を利用したスピントロニクス素子の典型である。その性能向上のためには,効率よくスピン偏極電流を供給する新規材料の創製が不可欠である。そこで,高スピン偏極(ハーフメタル)材料を利用した磁気抵抗素子における問題点を克服のための指針を,第一原理計算に基づいて理論的に提案した。特に理論計算にとって実験グループとの共同研究が重要であることを強調したい。
16:45 閉会