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垂直磁気ハードディスクドライブの発明者・岩崎俊一名誉教授へ日立グローバルストレージテクノロジー株式会社から製品第1号を贈呈

垂直磁気ハードディスクドライブの発明者・岩崎俊一名誉教授へ日立グローバルストレージテクノロジー株式会社から製品第1号を贈呈

岩崎俊一 名誉教授 ( Dr. Shun-ichi Iwasaki)

垂直磁気ハードディスクドライブの発明者・岩崎俊一名誉教授へ日立グローバルストレージテクノロジー株式会社から製品第1号を贈呈

岩崎俊一東北大学名誉教授(現東北工業大学長)が1977年に発明した垂直磁気記録方式を用いたハードディスク装置が,発明から28年を経た2005年に商品化されました.このたび,日立グローバルストレージテクノロジー株式会社中西宏明社長から,垂直磁気ハードディスクドライブ(2.5インチ,160ギガバイト)の同社の製品第1号が,発明者の岩崎俊一名誉教授に贈呈されました.

垂直磁化と長手磁化の微小磁石配置で互いに働く吸引力と反発力

磁気記録はテープレコーダによる音声記録やビデオテープレコーダによる映像記録からコンピュータ用ハードディスク装置 のディジタル情報記録まで,大容量情報を記録再生するために使われます.特に,最近のハードディスク装置は、テレビの録画装置や携帯オーディオ,あるいは携帯電話に搭載される超小型装置など,幅広く身近で用いられ始めています.東北大学電気通信研究所の岩崎俊一博士(現・東北工業大学理事長学長)は,この磁気記録技術の飛躍的な高密度化を成し遂げる垂直磁気記録方式を1977年に発明しました.

垂直磁気記録 [PDF版]

東北大学で試作したフロッピーディスク型の垂直磁気記録ディスク装置(1980年)
皇居において講書始の儀のご進講を行う岩崎俊一博士(1994年1月)

磁気記録は微小磁石の向きで1ビットの情報を蓄えますので、テープやディスクの限られた面積の中にいかに高密度に多くの微小磁石を並べるかが記録容量を決めます.垂直磁気記録方式は情報を担う微小磁石を記録媒体面に垂直に向けることで,高密度に並べるほど互いに吸引し合って安定化する磁石の原理的な性質を利用するものです.これまでの長手磁気記録方式ではディスク面に沿って微小磁石を向き合うように形成していたために,高密度に配置しようとすると磁石同士が互いに反発して不安定になっていましたが, 垂直磁気記録はそれとは対照的な性質を持っており本質的に高密度に適する方式です.

岩崎俊一博士の垂直磁気記録方式の発明は,記録方式と記録理論を世界に先駆けて確立したことに留まらず,垂直磁気異方性を持つCoとCrの合金薄膜を記録媒体として用いる発明と強い垂直磁界を発生する単磁極型の磁気ヘッドとの組み合わせから実際に高密度記録を実証して実現されたものです.

発明から28年後の2005年に垂直磁気記録方式を用いる最初のハードディスク装置が岩崎研究室出身者を中心に多くの力を結集して商品化され,わが国が発明から実用化に至るまでを一貫して貢献した典型的な実例になっています.デジタルオーディオやハードディスク録画機などの家庭電器製品から高度情報化社会になくてはならない大容量型ハードディスク装置まで,新世代情報ストレージとして幅広い分野で世界中で用いられ始めています.

お問合わせ先

東北大学電気通信研究所
ブロードバンド工学研究部門
情報ストレージシステム研究分野
(教授)村岡 裕明  TEL: 022-217-5456